100年前、南ドイツの実業家であったポール・レヒラーが亡くなりました。
そのレヒラーが作った会社が下記にあるLechler GmbHです。
彼が残した業績がどんなものだったか、ちょっとだけお教えします。
注：彼が作り上げたスプレーノズル、ガスケットの会社は現在も存続しており、その商品は日本国内の産業で使われています。
特にガスケットは日本の自動車産業でも使われています。

ドイツの実業家ポール・レヒラー（Paul Lechler, 1849年11月28日 – 1925年4月24日）は、産業界における卓越した業績と、社会福祉・医療分野への深い貢献で知られる人物である。
彼が創業または関与した企業は、今日のドイツ産業を支える重要な存在であり、その一つが現在のLechler GmbHであり、また彼の家系から派生した関連企業にElringKlinger AGが存在する。

ポール・レヒラーは、父が経営する塗料・ワニス製造会社「Christian Lechler & Sohn」に若くして参画し、1878年にはこの会社を売却。
翌年、自身の名を冠した「Paul Lechler」社を設立した。当初は潤滑油や木材保護剤を中心に製造していたが、1893年に液体噴霧ノズルの特許を取得すると、ノズル技術に注力するようになる。
これが、現代におけるLechler GmbH（レヒラー社）の基盤となる。

Lechler GmbHは、ドイツ・メッツィンゲンに本社を構え、現在では産業用スプレーノズルやノズルシステム、ミストセパレーターなどの分野において欧州屈指のメーカーである。
農業、食品・飲料、化学、鉄鋼、自動車、半導体、医薬品分野にわたり製品を提供しており、日本でもマルチチャンネルジェット型の静音エアーノズルなどが高く評価されている。
同社は環境保護の観点から、ノズル設計においてエネルギー効率や材料再利用にも注力しており、サステナビリティの観点でも先進的な企業である。

ポール・レヒラーの企業活動は技術革新だけにとどまらず、彼は社会貢献活動にも非常に熱心であった。
26歳からすでに企業利益の10％を教会や社会団体に寄付していたという。
1882年にはシュトゥットガルトに初の民間職業紹介所を設立し、医療支援・青少年福祉・教育支援などにも広く尽力。
特に、1898年の医療宣教師ゲオルク＝オイゲン・リーベンドルファーとの出会いは彼の活動に大きな影響を与え、1906年には「ドイツ医療宣教研究所（Deutsches Institut für ärztliche Mission, DIfÄM）」を創設。
その名を冠した「トローペンクリニック・パウル・レヒラー病院」は、今日でも世界中の熱帯医療の拠点の一つとして機能している。

さらに注目すべきは、彼の家系から発展した企業、ElringKlinger AGの存在である。
ElringKlingerは、ガスケット（パッキン）やエンジン周辺部品、近年ではEモビリティ関連製品も手掛ける自動車部品メーカーである。
元々は「Lechler & Klinger」社として1900年に設立され、ポール・レヒラーの娘婿であるリヒャルト・キンガー（Richard Klinger）との共同事業が母体であった。
のちにElring GmbHとKlinger GmbHが統合し、現在のElringKlinger AGとなった。

このように、ポール・レヒラーの影響は単一の企業にとどまらず、ドイツの産業構造全体に深く関わっている。
彼の創業精神と社会貢献への理念は、Lechler GmbHの技術革新やElringKlinger AGの持続可能なモビリティへの取り組みにも脈々と受け継がれている。
これらの企業は今なお世界市場で存在感を示し、同時に社会的責任を果たすというレヒラーの哲学を体現している。

ポール・レヒラーは、まさに産業界と人道主義の架け橋となった人物であり、その生涯と業績は現代においても大きな示唆を与えている。

このような偉大な実業が作った会社と共に弊社が事業を営むことが出来るのも彼のおかげかも知れません。
弊社もその彼の意志を受け継ぎながら精進して参ります。